科学的な否定論がある一方で、産科病棟やホスピス、終末期医療の現場で働く専門職からは、今なお「潮や月齢を無視できない」という声が根強く聞かれます。
ベテランの助産師に話を聞くと、「大潮の日や満月の夜は陣痛室が満床になりやすい」「当直表を作るとき、満月と新月のシフトは手厚くする」といった経験則が語られる場面は少なくありません。終末期の現場に立つ看護師の間でも、「夜勤帯の引き潮の時間帯に急変が重なった」という体験談が語り継がれています。
なぜ、物理的な影響がないはずの現場でこのような実感が生まれるのでしょうか。認知心理学の観点からは、「確証バイアス」が主たる要因として説明されます。医療従事者は日常的に無数の出産や看取りに立ち会っていますが、満潮や満月、引き潮のタイミングで起きた劇的な出来事は強く記憶に刻まれます。一方で、何もない小潮の日に起きた出産や臨終は記憶から抜け落ちやすいため、「やはり潮の満ち引きが生死に関係している」という印象が強化されていくのです。