統計データで否定されているにもかかわらず、なぜ今なお病院の現場では潮の干満が語られるのでしょうか。実際に産科や緩和ケア病棟、ICU(集中治療室)で働く看護師や医師の中には、「不思議と大潮の夜は陣痛のコールが重なる」「引き潮の時刻に患者が亡くなるケースが多い気がする」と証言する人が後を絶ちません。
この現象を説明する心理学的要因が「確証バイアス」です。人間は、自分の先入観や信念に合致する出来事を強く記憶し、それに反する日常的な出来事を無意識に忘れ去る傾向があります。
満潮時に難産が重なったり、干潮時に患者が息を引き取ったりしたときは、「やはり言い伝え通りだ」と強く記憶に刻まれます。一方で、干潮時に出産したり満潮時に亡くなったりした日常的なケースは、記憶に留まりにくいため、「潮の満ち引きと生死は連動している」という現場の実感が強化され続けているのです。