リングの真ん中で重心を低く落とし、両手を力強く前に突き出す。観客の歓声が一瞬で引き締まった静寂へと変わるあの瞬間、リングを支配しているのは間違いなくトリケラトプスポーズだ。この独特な構えの起源は、板垣恵介氏による伝説的な格闘漫画『グラップラー刃牙』に遡る。
作中で主人公が見せる古代恐竜のイメージを宿した構え。幼少期から大の漫画好きとして知られる那須川天心は、現実のリングでこの空想の技術を体現してみせた。フィクションのアイデアをそのまま実戦に持ち込むという発想自体、常識に囚われない彼ならではのアプローチだ。ファンを喜ばせるエンターテインメント性と、実戦的な緊迫感が奇跡的なバランスで融合した名シーンとして語り継がれている。