化学薬品や熱による融解とはメカニズムが根本から異なりますが、「生体の維持構造が崩壊していく」という点で特筆すべき重大事故事例が、1999年に茨城県東海村で発生したJCO臨界事故です。
このJCO臨界事故の被曝経緯において、作業手順の逸脱によりウラン溶液が臨界状態に達し、大量の中性子線とガンマ線を作業員が至近距離で浴びました。推定16〜20グレイ・エクイバレントという致死量を大幅に超える超大量被曝を受けた作業員の体内では、細胞の設計図である23対の染色体が完全に破壊・切断されました。
これにより、生命活動に必要な新しい細胞を分裂・再生する能力が完全に失われました。日を追うごとに皮膚が再生されず剥がれ落ち、粘膜が消失して消化管からの大出血が持続。体液が全身から滲み出し、白血球を作ることができなくなるなど、生体組織が内側から崩壊していく凄惨な経過をたどりました。現代医学の粋を集めた懸命な集中治療が行われたものの、DNAの破壊による不可逆的な全身組織の崩壊を止めることはできず、数ヶ月後に命を落とすこととなりました。