講談の歴史は長い。釈台と呼ばれる小さな机の前に座り、右手に持った張り扇で調子を取りながら、歴史上の合戦や仇討ちを語る。それが数百年培われた定型だった。だが、貞水はその古典的フォーマットに満足しなかった。
彼が創り上げた「立体怪談」は、舞台美術、照明効果、拍子木や風の音といった音響効果を緻密に計算し尽くした総合演出である。語りが山場に差しかかると、寄席の明かりがふっと消え、釈台の背後から怪奇な青や緑の光が立ちのぼる。観客の視覚と聴覚を同時に揺さぶるこの仕掛けは、当時「正統派の講談ではない」と眉をひそめる保守派もいた。しかし、観客の熱狂がその批判をねじ伏せた。伝統を壊したのではない。伝統の話術が持つ破壊力を、現代の劇場感覚で極限まで引き出したのだ。