多くの読者が最も息をのんだのが、小説『Red』が辿り着くあまりにも切なく衝撃的な結末だ。物語の終盤、宿病を抱えていた鞍田の死という避けては通れない悲劇が訪れる。通常のメロドラマであれば、愛する者を失った主人公は絶望に沈むか、あるいは元の家庭へと這うように戻るのが定石だろう。
しかし、塔子が選んだ生き方はそのどちらでもなかった。彼女は夫のもとへ戻る道を選ばず、さりとて過去の思い出だけに生きて衰弱することもない。鞍田との愛を通じて獲得した「自分自身の足で立つ強さ」を胸に、自らの手で仕事と生活を切り拓く独立の道を歩み出す。誰かの「妻」でも「母」でもなく、ひとりの人間として生きていく決意。これこそが、本作が単なる不倫小説にとどまらない最大のネタバレであり、真の核心である。