福岡県北九州市戸畑区で繰り広げられる戸畑祇園大山笠は、昼と夜でその表情を劇的に変える稀有な祭りだ。昼の姿は、紅白の幟(のぼり)をなびかせた優雅な「幟山笠」。しかし陽が落ちると、その姿は一変する。
わずか数十分の間に装飾が解かれ、12段、計309個の提灯が組み上げられていく。完成するのは、高さ約10メートル、重量2.5トンにも及ぶ巨大な光のピラミッド「提灯大山笠」だ。国指定重要無形民俗文化財としての風格を漂わせながら、漆黒の夜空を黄金色の光で照らし出す。
「ヨイトサ、ヨイトサ」の掛け声が地鳴りのように響き渡る。担ぎ手たちの肩には生々しいタコができ、足元は一歩間違えれば大事故につながる緊張感。それでも彼らが満面の笑みで山を揺らすのは、先祖から受け継いだ誇りが身体の奥底に流れているからにほかならない。