虐待の傷跡は、大人になってから「自己破壊衝動」として噴出する。遠野が長年苦しんでいる摂食障害(拒食と過食の繰り返し)や自傷行為は、まさにその典型例だ。自分の体をコントロールすることで、コントロールできなかった過去の恐怖から逃れようとする、悲痛な防衛反応である。
彼女の不安定な恋愛観や、短期間での結婚・離婚の繰り返しも、世間からは奇異の目で見られがちだ。しかし、これらはすべて「無条件の愛」を奪われた子供が、大人になって必死に温もりを求め、そして裏切られるのを恐れて自ら関係を壊してしまうという、虐待サバイバー特有のトラウマの現れに他ならない。