ネットの掲示板やSNS上で頻繁に見られるのが、「走者が走っているのに打者が微動だにせず見送るなんて、サインミスに違いない」というファンの書き込みです。しかし、現場で起きている実態はその真逆であることが大半を占めます。
打者見逃しの真相とは、「打者が自制心を発揮し、ボール球を打たないという作戦上のルールを完璧に遂行した結果」にほかなりません。もしこれがエンドランであれば、どんなボール球でもバットを当てにいかなければなりませんが、ランエンドヒットではボール球を強引に振る行為こそがベンチの信頼を裏切る最悪の悪手とみなされます。
ボール球を無理に打ちにいけば、体勢を崩されてポップフライを打ち上げ、スタートを切った走者が戻れず併殺になるリスクがあります。また、中途半端なスイングで空振りをしてしまうと、打者自身のストライクカウントが悪化するだけでなく、キャッチャーの捕球と二塁送球に勢いを与えてしまい、空振りリスクと盗塁死の複合事故を引き起こしかねません。
一流の打者がランエンドヒットで見逃しを選ぶ瞬間は、サインミスどころか、打席内での類まれな動体視力と冷静沈着な選球眼の証明なのです。