「ライトノベルとは何か」という問いに対する出版業界の通説は、驚くほどシンプルでありながら曖昧です。結論から言えば、「ライトノベルレーベルから刊行されているエンタメ小説」というのが最も正確な業界的定義とされています。しかし、作品の構造や読書体験の観点から見ると、一般小説とは明確に異なる複数の特徴が存在します。
最大の違いは「キャラクター主導(キャラクター・ドリブン)のストーリーテリング」にあります。一般文芸がテーマ性や緻密な心理描写、プロットの整合性を重視する傾向にあるのに対し、ライトノベルは「登場人物の強烈な個性や関係性」を推進力として物語が展開します。読者がキャラクターに感情移入し、いわゆる「推し」を見出す体験が設計の中心にあるのです。
また、文章表現においても明確な差別化が図られています。テンポの良い会話劇、地の文における軽快な語り口、視覚的なイメージを喚起しやすい平易な文章構成など、「ストレスなく一気に没入できる可読性の高さ」が徹底して追求されています。改行の多さやタイポグラフィ(文字の大きさや配置の工夫)を用いた演出も、ラノベならではの際立った特徴です。
一方、Web小説との違いについては、現在では「媒体と制作プロセスの差」に集約されます。Web小説(特に『小説家になろう』『カクヨム』などの投稿プラットフォーム発祥作品)は、日々の読者反応をリアルタイムに反映しながら連載されるのに対し、ライトノベルはプロの編集者と作家が推敲を重ね、書籍としてパッケージングした完成品です。現在市場に並ぶ書籍の多くはWeb小説発ですが、商業出版の段階で大幅な加筆修正や構成のブラッシュアップが行われています。