犬の腹部から聞こえる「キュルキュル」「ギュルル」という音の正体は、医学用語で「腹鳴(ふくめい)」と呼ばれます。これは胃や腸が消化物を先へ送るために収縮運動(蠕動運動)を行う際、消化液とガスや空気が混ざり合って生じる物理的な摩擦音です。
腹鳴自体は健康な犬でも日常的に発生しますが、問題はその「発生頻度」と「併発症状」にあります。原因を大別すると、経過観察が可能な生理的要因と、一刻を争う病理的要因の2つに分かれます。
まず生理的な要因として最も多いのが「空腹」です。胃の中が空っぽになると、胃壁が強く収縮して強い腹鳴が生じます。また、早食いの癖がある犬がフードと一緒に大量の空気を飲み込んでしまうこと(空気嚥下症)や、フードの切り替えによる軽度の消化不良でも一時的にお腹が鳴りやすくなります。
一方で、警戒しなければならないのが消化器系の炎症や器質的障害です。特に以下の3大疾患は、激しい腹鳴を契機に発覚することが少なくありません。
1. 急性胃腸炎
腐敗した拾い食い、ストレス、細菌やウイルスの感染によって胃腸粘膜が急激に炎症を起こす病気です。過剰に発生したガスと分泌液が腸内を急激に移動するため、連続した大きな腹鳴が発生します。
2. 急性膵炎
高脂肪食の過剰摂取などを引き金に、膵臓の消化酵素が自分自身の組織を溶かしてしまう重篤な疾患です。激痛を伴うため、お腹の音とともに犬が背中を丸めて震える様子が見られます。
3. 誤飲・誤食による腸閉塞
おもちゃの破片、ペットボトルのキャップ、果物の種などを飲み込み、消化管が物理的に塞がれてしまう状態です。詰まった箇所の手前で腸が激しく内容物を押し出そうと蠕動するため、異様な高音の腹鳴が鳴り響くことがあります。