市販の総合栄養食(ドライフード)は、AAFCO(米国飼料検査官協会)やFEDIAF(欧州ペットフード工業会連合)の厳格な栄養基準を満たし、それ単体と水だけで健康を維持できるよう設計された工業製品です。しかし、流通上の保存性を高めるための加熱処理工程において、食材本来の酵素や一部のビタミンが失活することは避けられず、含有水分量もわずか10%前後に抑えられています。
手作り食が注目される最大の理由は、食材に含まれる約70〜80%の生体水分を自然に摂取できる点にあります。慢性的な水分不足に陥りやすい室内飼育犬において、食事由来の水分摂取は腎臓への負担を劇的に軽減し、尿路結石のリスクを押し下げる要因となります。
ネット上で頻繁に語られる「犬の手作りご飯で涙やけが改善した真相」についても、科学的な機序が明らかになりつつあります。臨床現場の観察によると、涙やけ(流涙症に伴う被毛の変色)の多くは、低品質な油脂の酸化生成物や過剰な添加物が鼻涙管周囲の炎症・詰まりを誘発すること、あるいは特定タンパク質への潜在的なアレルギー反応が関与しています。新鮮な単一タンパク質と野菜を用い、老廃物の排泄を促す高水分食へ切り替えることで、目周りの代謝環境が整い、結果として涙やけが大幅に軽減される事例が数多く確認されています。