愛犬が前足をしきりに舐める光景を見かけた際、多くの飼い主は「足をきれいにしているだけだろう」と見過ごしがちです。しかし、犬の肉球を舐める理由を臨床現場で紐解くと、その大半は毛づくろいではなく、痒みや違和感、疼痛に対する防衛反応であることが判明しています。
特に注視すべきは、肉球の間や指の隙間の皮膚が赤くただれる犬の肉球の赤い炎症です。この状態の多くは「指間炎(しかんえん)」と呼ばれる皮膚疾患に該当します。犬の肉球の指間炎の症状としては、執拗な足舐めや噛みつき行動をはじめ、指間の発赤、脱毛、腫脹、さらには悪化すると膿(うみ)が滲み出る事態にまで発展します。
指間炎を引き起こす根本原因は多岐にわたります。まず挙げられるのが、常在菌であるマラセチア(真菌)やブドウ球菌の異常増殖です。雨の日の散歩後や足洗い後に指間を湿ったまま放置すると、高温多湿な環境を好む菌が一気に繁殖し、強烈な痒みを引き起こします。また、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーを持つ個体では、真っ先に指間や肉球周囲にアレルギー反応の発赤が現れる傾向があります。
さらに見落とされやすいのが「心理的ストレス」による常同行動です。留守番の時間が長すぎる孤独感や、運動不足によるフラストレーション、環境変化に対する強い不安から、自らの足を舐め続けることで精神を落ち着かせようとする自傷行動の一種です。唾液に含まれる成分によって皮膚がさらにふやけ、バリア機能が壊れて細菌感染を招くという悪循環に陥るため、単にエリザベスカラーで物理的に遮断するだけでなく、生活環境や心理面へのアプローチが欠かせません。