大洋ホエールズとのダブルヘッダー第2試合終了後、静まり返った後楽園球場で執り行われた「長嶋茂雄引退セレモニー(1974年10月14日)」は、日本スポーツ史における最高峰のドラマとして語り継がれている。グラウンドを一周する長嶋茂雄の姿に、スタンドからは紙吹雪と無数のテープが舞い散った。
試合前のロッカー室は異様な緊張感に包まれていた。首の激痛と満身創痍の肉体に耐えながら、彼は最後まで「魅せる男」であり続けることを自らに課していたのだ。最後の打席で放った併殺打ですら、全力疾走の美学としてファンの脳裏に刻み込まれている。結果の巧拙を超越した存在感。それこそが、彼が稀代のスターであった証左に他ならない。