秋田県立美術館の常設展の中核をなすのが、秋田の資産家であり美術コレクターであった平野政吉(1895–1989)と、世界的画家・藤田嗣治(1886–1968)の深い友情から生まれた「平野政吉コレクション」です。
その象徴が、2階の専用展示室に展示されている巨大壁画『秋田の行事』(1937年制作)です。幅20.5メートル、高さ3.65メートルという世界屈指のスケールを誇るこの大作は、当時の秋田の暮らしと伝統文化を克明に描き出しています。画面左手には秋田の厳しい冬を彩る「かまくら」や「三吉梵天祭(みよしぼんてんさい)」の熱気が、中央から右手にかけては夏の風物詩である「竿燈まつり」の躍動感が、藤田独自の繊細な細線と乳白色の下地の上にダイナミックに描かれています。
安藤忠雄氏はこの壁画を鑑賞するためだけに、柱を一本も配さない大空間展示室を設計しました。視界を遮るもののない広々とした空間で、少し離れて全体の一体感を味わい、近づいて一人ひとりの人物描写や祭りの熱気を観察するという、贅沢な鑑賞体験が可能です。展示室には1930年代の代表作や数々のデッサン、制作当時の貴重な写真資料も並び、藤田の画業の変遷を多角的に学ぶことができます。