親学とは、明星大学名誉教授の高橋史朗氏らが2000年代初頭から提唱し始めた家庭教育理論です。2007年には一般財団法人親学推進協会が設立され、親としての心構えや子育ての規範を体系化した講座や親学アドバイザー資格の認定などを展開してきました。
その根底にあるのは、戦後日本の個人主義や核家族化が家族の絆を弱め、青少年の非行や不登校、学力低下を招いたとする文明論的危機感です。高橋氏らは「子育ての失敗が社会崩壊を招く」とし、母乳育児の推奨、幼少期のスキンシップ、添い寝、子守歌といった日本古来の伝統的子育てに立ち返ることを強く主張しました。
一見すると温かみのある親子の触れ合いを説いているように見えますが、その論理は「母親が家庭に専念し、無条件の愛情を注ぐことこそが子どもの健全育成の絶対条件である」という固定的な性別役割分担を前提としています。この復古的な家族観が、後の深刻な社会的軋轢を生む土台となりました。