映画『千と千尋の神隠し』の冒頭、千尋の父親が豪快に頬張る半透明の巨大な袋状の食べ物は、長年ファンの間で「最も正体が気になるジブリ飯」として議論の的になってきた。鶏の丸焼きや巨大な骨付き肉が並ぶ中、異彩を放つあのぷるんとした物体である。
この料理について、スタジオジブリの原画マンや関係者が明かした絵コンテの記述には「シーラカンスの胃袋」と記されていたという証言が存在する。古代魚の内臓という設定は、いかにも神々が憩う異界の珍味にふさわしい不気味さを醸し出している。しかし、宮崎駿監督自身は特定の既存料理を完全にモデル化したわけではないと示唆している。
株式会社スタジオジブリが過去にファンの質問へ送った公式回答でも、この料理は「神々の世界に迷い込んだ人間を罠にかけるための、この世ならぬ美味」であり、特定の現実の食材に限定されるものではないという見解が示された。つまり、現実の生物をモチーフにした視覚的リアリティを持たせつつも、本質は「人間の理性を狂わせる霊的なごちそう」なのだ。観る者が思わず喉を鳴らしてしまうシズル感と、得体の知れない気味悪さが同居している理由がここにある。