運命の歯車が大きく動き出したのは1973年。TBSテレビを代表する看板番組『時間ですよ』の新人オーディションだった。応募総数は実に2万5000人超。その頂点に立ち、銭湯「松の湯」のお手伝いさん・美代子役に抜擢されたのが、当時まだ無名だった浅田美代子である。
現場を指揮した名プロデューサー・久世光彦は、彼女が醸し出す飾らない素朴さと天性の愛嬌に直感的な光を見出したという。ドラマが放送されるや否や、全国のお茶の間は騒然となった。画面のなかで屋根の上にちょこんと座り、隣のお手伝いさんと無邪気に言葉を交わす姿は、視聴者の庇護欲と親近感を瞬く間に鷲掴みにした。一夜にして国民的アイドルへと駆け上がったあの熱狂は、日本のテレビドラマ史においても指折りのシンデレラストーリーとして今も語り継がれている。