埼玉県公立入試において、受検生の心理を最も揺さぶる制度が「埼玉高校入試 志願先変更」です。出願速報公表後、わずか2日間の受付期間に一度だけ志願校を変更できるこの制度は、受検生と家庭にとって極限の心理戦となります。
県内の大手学習塾で進路指導責任者を務める担当者は、出願速報が出た夜の現場の空気を次のように明かします。
「志願状況速報で志望校の倍率が1.6倍や1.8倍に跳ね上がった瞬間、塾の電話は鳴り止まなくなります。『この内申点と過去問の手応えで突っ込ませて大丈夫でしょうか』『安全な別校へ変更すべきでしょうか』と、保護者の方はパニックに近い状態に陥るケースも少なくありません。特に市立浦和や蕨、川口市立などの高倍率校に出願した受検生家庭の緊迫感は凄まじいものがあります」
SNSやネット掲示板上でも、「1倍台前半だと思っていたら予想外の激戦。変更先を探しても周りも上がっていて逃げ場がない」「子ども本人は初志貫徹したいと言うが、親としては不合格のショックを避けさせたい」といったリアルな葛藤が渦巻いています。
実際に昨年、高倍率の市立浦和から志願先変更を行い、最終合格を掴み取ったある保護者は自らの体験談としてこう振り返ります。
「当初は子どもの『どうしても行きたい』という熱意を応援していましたが、確定倍率の発表直前、塾長から『過去問で400点を切った回があるなら、この倍率では危険すぎる』と直言されました。家族で深夜まで話し合い、最終的に変更を決断しました。本人は涙を流しましたが、進学先となった高校で今、充実した日々を過ごしています。あの数日間の張り詰めた空気は、今でも忘れられません」