指定から1世紀を迎えた高井の千本杉の現在の様子はどうなっているのか。現地を定点取材すると、巨樹を取り巻く環境の変化と、それを懸命に守り抜こうとする地域コミュニティの熱量が生々しく伝わってくる。
昭和後期から平成にかけて、台風による太枝の折損や落雷、土壌の踏み固めによる根の衰弱など、この木は幾度となく存亡の危機に直面してきた。ネット上の一部では「枯れかけているのではないか」という懸念の声も散見されるが、現地を確認するとその認識は改められる。現在、幹の周囲には根系を保護するための木製柵が巡らされ、参拝者が立ち入って根を踏み荒らさない配慮が徹底されている。
樹木医の診断に基づき、折損の危険がある枯れ枝の丁寧な除去や、土壌改良材の施入、支柱による荷重分散といった科学的な保全処置が継続的に施されている。かつてのような密集した暗がりを形成する枝葉の量からは変化したものの、力強く天へと伸びる主枝からは瑞々しい青葉が芽吹いており、800年の歳月を生き抜いてきた生命力の芯は決して衰えていない。保護柵の外から見上げるその姿は、痛々しさよりも歴戦の勇者のような気高さを漂わせている。