三笠の夏の夜を特別なものにしている最大の要素は、音源テープに頼らない「完全生演奏」へのこだわりだ。中央公園に鎮座する櫓の上では、保存会の唄い手たちが代わる代わるマイクを握り、身体全体を鳴らすように唄声を響かせる。合わせる三味線と太鼓の打ち手も、一切の妥協を許さない。
テンポは決して速すぎず、重厚で大地を踏みしめるようなリズムが特徴だ。手拍子一つ、足踏み一つにも力強さが宿り、観客は気付けばただの「観る側」から「踊る側」へと引きずり込まれていく。夜が更けるにつれて円陣は二重、三重と膨らみ、熱気で夜風の冷たさすら吹き飛んでしまうほどだ。