「どのような被害に遭えば、警察はサイバー犯罪として動いてくれるのか」――これは被害に直面した当事者が最も痛感する疑問です。警察庁の公式見解およびサイバーセキュリティ基本法の趣旨に基づき、警察庁はサイバー犯罪を単なる「ネット上のトラブル」と区別し、刑罰法規に抵触する具体的な事案を以下の3つの大分類で厳格に定義しています。
第1に、不正アクセス禁止法違反です。他人のIDやパスワードを無断で使用してサーバーやサービスに侵入する行為(不正アクセス行為)をはじめ、不正にパスワード等を取得・保管・提供する行為や、フィッシング詐欺のように偽の入力画面を設けて他人の認証情報をだまし取る行為がこれに該当します。
第2に、コンピュータ・電磁的記録を対象とした犯罪です。刑法に規定される電子計算機損壊等業務妨害罪、電磁的記録不正作出罪、電子計算機使用詐欺罪、さらにはコンピュータウイルスを作成・提供・保管する「不正指令電磁的記録に関する罪」が含まれます。サーバーに過剰な負荷をかけてサービスを停止させるDDoS攻撃や、ランサムウェアによるデータの暗号化・破壊行為はまさにこの類型です。
第3に、ネットワーク利用犯罪(不正利用犯罪)です。高度情報通信ネットワークを不可欠な手段として利用して行われる刑法違反や特別法違反を指します。具体的には、SNSや偽ECサイトを悪用した詐欺、ネット上での誹謗中傷・名誉毀損、児童ポルノの製造・拡散、著作権法違反、不正な薬物取引などが幅広く網羅されています。
警察庁が定義する境界線の核心は、「単なる金銭・民事上の債務不履行や感情の衝突ではなく、情報通信技術の悪用により法益侵害が発生し、明確な構成要件に該当するか否か」にあります。単に「ネット通販で商品が届かない」という初期のトラブルでは民事扱いとなる可能性がありますが、最初から商品を発送する意思がなく組織的に偽サイトを構築していた場合は、直ちにネットワーク利用詐欺事件として刑事捜査の対象に切り替わります。