フィールドを去った元選手たちは、その後どのような軌跡を辿るのか。かつて全国的な知名度を誇ったある元Jリーガーは、引退後に発表した自著の手記の中で、当時の生々しい心境を次のように告白している。
「ユニフォームを脱いだ瞬間、自分から『サッカー選手』という看板が完全に消え去った。パソコンの立ち上げ方すら分からず、オフィスのコピー機の前で立ち尽くしたとき、社会人として何も持たない自分に震えた」
ネットの掲示板やSNSでは、「有名選手なら飲食店を開けばファンが押し寄せる」「コーチや解説者になれば安泰だ」といった楽観論が散見される。しかし飲食業界の統計を見れば、開業後3年以内に廃業する割合は7割を超えており、経営ノウハウを持たない元アスリートが開業した店舗が早期に閉店へ追い込まれる例は枚挙にいとまがない。指導者や解説者の椅子も極めて限られており、プロ球団の指導者枠は毎年の引退者数の数分の一に過ぎない。
かつては「現役時代に培った根性と体力」を売りにして営業職や警備業、運送業などに就くケースが一般的だった。しかし近年では、日本プロサッカーリーグのキャリアサポートセンターや、日本野球機構(NPB)のセカンドキャリア支援事業、さらにはアスリート専門の民間就職エージェントによる就職支援制度が充実し始めている。ビジネスマナー研修やITリテラシー講座、インターンシップの機会を提供する取り組みが広がっており、引退後の人生を「ゼロからの再出発」ではなく「キャリアの接続」として捉え直す動きが定着しつつある。