中村雅俊のキャリアを語る上で、同じ文学座の先輩であり、終生のライバルでもあった松田優作の存在は外せない。陰と陽、狂気と温情。対照的な魅力を放つ二人は、互いに強い刺激を受け合っていた。
アクションとハードボイルドの極限を目指した松田に対し、中村はどこまでも人間臭い温かさを追求した。後年、中村は松田との思い出を語る際、その圧倒的な存在感への憧れと、自分だけの道を切り開くための葛藤があったことを明かしている。二人の天才が同じ時代に同じ劇団で牙を研いでいたという事実は、日本エンタメ界の奇跡と言っても過言ではない。