あんこう鍋のスープには、大きく分けて茨城・大洗発祥の「味噌仕立て(どぶ汁系)」と、東京などの老舗料亭で好まれる「醤油仕立て(ちり鍋風)」の2つの潮流が存在します。家庭で圧倒的な満足度を得るならば、あん肝の脂をスープに完全に同化させる味噌スープの黄金比率が外せません。
名店のコクを家庭のコンロで再現するための、出汁と調味だれの黄金比(4人前・仕上がり約1,200ml分)は以下の通りです。
- 昆布と鰹の合わせ出汁:1,000ml(昆布15g、厚削り鰹節20gで濃いめに抽出)
- 信州赤系味噌:60g(コクと発酵香のベース)
- 仙台味噌または八丁味噌:20g(深みとキレ、重厚感を付与)
- 西京白味噌:20g(甘みとまろやかなとろみの補強)
- 本みりん:60ml
- 清酒:80ml
- 濃口醤油:15ml(味の輪郭を引き締める隠し味)
- すりおろし生姜汁:小さじ1(魚脂の重さを切る芳香付け)
そして、このスープを別次元の濃厚さへと押し上げるのが「あん肝ペースト」の下ごしらえです。生のあん肝を使う場合、まずは薄皮と太い血管を竹串で丁寧に取り除き、酒に約20分間浸して血抜きを行います。その後、弱火にかけた乾いたフライパンや土鍋にあん肝を入れ、ヘラで細かく押し潰しながらじっくりと乾煎りします。
加熱を続けると、あん肝自身の油(肝油)がジワジワと染み出してきます。焦がさないように木べらで練り上げ、ペースト状になったところで、上記の合わせ味噌を投入して一緒に炒め合わせます。味噌が油を吸って香ばしい香りが立ち上った瞬間に出汁を少しずつ注ぎ入れ、泡立て器で攪拌しながら乳化させていきます。この「油と味噌の加熱乳化」こそが、スープの表面にギトギトした油を浮かせず、最後の一滴までまろやかに飲ませる老舗の技法です。
一方、より澄んだ上品な味わいを好む場合は、昆布出汁をベースに「酒100ml、みりん50ml、薄口醤油60ml」で仕立てた醤油ベースだしが最適です。ポン酢ともみじおろしを用意し、白身魚としてのあんこうの清涼感を際立たせる食べ方もまた一興と言えます。