彼の政治的手腕と人間性を紐解くうえで欠かせないのが、若き日に所属していたソ連国家保安委員会(KGB)でのキャリアだ。1970年代半ばに諜報機関の門を叩いた青年は、東ドイツのドレスデン勤務をはじめ、情報収集や心理工作の最前線で冷徹な観察眼を養った。過酷な冷戦下で培われた「感情を表に出さない」「徹底的な情報管理」という姿勢は、現在の政治手法の骨格を成している。
ソ連崩壊という未曾有の混乱期を経て、彼はサンクトペテルブルク市執行部から政界の中央へと急速に台頭した。1990年代末、ボリス・エリツィン大統領に見出され、権力の心臓部であるモスクワ・クレムリンへと足を踏み入れた瞬間から、ロシアの歴史は新たな局面を迎えることとなった。情報機関出身者ならではの計算し尽くされた戦略が、彼の政権基盤を揺るぎないものにした。