これほど強力なラインナップが揃っていながら、なぜ最終的な製品版では除外されてしまったのでしょうか。取材および当時の業界動向を総合すると、3つの明確な障壁が存在していました。
第1の要因は、複雑怪奇な版権・ライセンス問題です。代表格が『グランツーリスモ』やレースゲーム群です。実在する自動車メーカー各社との契約や、ゲーム内に収録されている楽曲の音楽著作権は、数十年の歳月を経て権利関係が大幅に変化しています。復刻のためにそれらを再契約するコストは莫大であり、販売価格を抑えるミニハードの枠組みでは現実的ではありませんでした。
第2の要因は、ハードウェアスペックとエミュレーションの再現度です。PSクラシックに採用されたMediaTek製クアッドコアSoCは、コストパフォーマンスに優れる反面、高負荷な3Dポリゴン描画や特殊な描画チップを用いていたタイトルにおいてフレームレートの低下や音ズレを引き起こしました。『サイレントヒル』のような濃密な霧のエフェクトやテクスチャ補間を完全に再現するには、開発期間内の最適化が間に合わなかった側面が指摘されています。
第3の要因は、グローバル展開におけるレーティング(CERO・ESRBなど)の兼ね合いです。暴力表現や成人向け要素を含むタイトルを入れると、製品全体の対象年齢が引き上げられ、一般の量販店でファミリー層向けに販売しづらくなるという商業上の制約が働きました。