1970年代に産声を上げ、少女漫画という表現形式の可能性を根底から押し広げた巨匠・萩尾望都。彼女が小学館の『月刊flowers』をはじめとする舞台で紡ぎ出した世界は、単なるエンターテインメントの枠を軽々と飛び越え、文学としての気品を湛えていた。時代ごとの空気感を繊細に吸い込みながら、決して色褪せることのなかったエドガーの孤独な瞳は、幾度となく読者の胸を抉り、そして救ってきた。
長きにわたる休筆期間を経てリブートされた新シリーズ群に至るまで、物語の底流には常に「生きることの不条理」と「誰かと繋がり合いたいという渇望」が流れていた。完結を迎えた今、改めてその全貌を振り返ると、緻密に編み込まれたタペストリーのような物語構造に驚嘆させられる。一コマ一コマに宿る静謐な詩情、息をのむような心理描写、そして容赦のない運命の残酷さ。そのすべてが有機的に結びつき、類を見ない壮大な叙事詩を完成させたのである。