90年代半ば、音楽プロデューサー小室哲哉氏とのタッグでミリオンセラーを連発した時代は、彼女のキャリアにおいて永遠に語り継がれる章だ。しかし、当時の輝かしい栄光は同時に、若い彼女の心身を激しく磨耗させる諸刃の剣でもあった。
過去の成功体験という巨大な影と長年戦い続けてきた彼女だが、現在のステージに悲壮感はない。かつてのヒット曲を「過去の遺産」として懐かしむのではなく、波乱に満ちた自らの人生の一部として愛おしむように歌い上げる。旋律に宿る深みは、過酷な年月を生き抜いてきた者だけが手に入れられる真の強さだ。