被害補償を専任で行う組織へと改編されたSMILE-UP.(旧ジャニーズ事務所)は、数百名規模の被害者に対する補償金の支払いを順次進めてきた。救済委員会を設置し、申告内容の精査と提示額の算出が淡々と進められている。しかし、そのプロセスが完全に平坦であったわけではない。
補償額の算定基準や、当時の被害状況を立証する難しさ、精神的苦痛に対する評価をめぐり、会社側と当事者側との間には現在も埋まりきらない溝が存在する。特に、長年の沈黙を余儀なくされたことによる機会損失や人生への悪影響をどのように金銭換算するのかという課題は、従来の裁判法理の枠組みを超えた難題だ。平本淳也氏ら被害当事者が求めてきたのは単なる金銭的解決ではなく、加害の歴史に対する真摯な対峙と、被害者個々の尊厳回復に他ならない。