「飄々(ひょうひょう)」という擬態語は、もともと風が吹き煽る様子や、定まりなくブラブラとあてもなくさまよう姿を意味していた。国語辞典の代名詞である『広辞苑』を刊行する岩波書店などの辞書記述を紐解くと、そこには「風の吹くままに行動するさま」「こだわりがなく、捕らえどころのないさま」と記されている。
言葉の変容に関する調査を定期的に行う文化庁の知見を重ね合わせても、時代の潮流によって言葉のニュアンスは大きく変化してきた。かつては「浮世離れした変人」あるいは「現実逃避的」というやや冷ややかな視線が含まれていたこの表現が、現在では羨望を込めた褒め言葉へと昇華している。
ここで重要になるのが、類語との決定的な違いだ。例えば「能天気」は何も考えていない軽薄さを指し、「無責任」は果たすべき義務の放棄を意味する。対して「飄々としている」人は、決して思考を停止しているわけではない。自分の内面に揺るぎない軸を持ちながらも、それをあえて誇示せず、しなやかに風を受け流している点に本質的な差異が存在する。