皮膚の痒みを引き起こす肝疾患は多岐にわたり、軽度の段階から命に関わる重篤な状態まで幅広く存在する。
身近な疾患としては、過栄養や運動不足から生じる「脂肪肝(MASLD/MASH)」が挙げられる。脂肪肝自体は初期に無症状であることが多いものの、慢性的な炎症や線維化が進むと肝機能が徐々に低下し、老廃物の解毒が追いつかなくなって皮膚の痒みとして現れ始める。
さらに注意が必要なのが、自己免疫性の肝疾患である「原発性胆汁性胆管炎(PBC)」である。中高年女性に好発するPBCでは、黄疸や肝不全症状が現れる数年前から、初発症状として頑固な皮膚の痒みが出現することが医学界で広く知られている。
病状が「肝硬変」へと進行すると、肝細胞の破壊と線維化により胆汁の排泄障害が深刻化し、血液中のビリルビン濃度が上昇する。これにより、白目や皮膚が黄色くなる「黄疸」が現れ、同時に全身の皮膚に激烈な痒みが襲いかかる。黄疸と強い痒みが併発している状態は、肝機能が限界に近づいている警戒水域のサインである。