では、そもそもなぜペルーの旗は「赤と白」なのだろうか。そこには、南米の独立史に輝く劇的なエピソードと崇高な理念が宿っている。
歴史的記録によると、ペルーの国旗の色を定めたのは、南米南部をスペインの植民地支配から解放した伝説的指導者、ホセ・デ・サン・マルティン将軍である。1820年9月、将軍率いる解放軍がペルー南部のパラカス湾に上陸した際、砂浜で休息を取っていた将軍は、群れをなして大空へと羽ばたく鳥たちの姿を目撃した。その鳥は、胸が純白で翼が鮮烈な赤色をしたフラミンゴの一種「パリワナ(Parihuana)」だったと伝えられている。
風を切って優雅に飛翔する美しいパリワナの姿に深い神託を感じたサン・マルティン将軍は、「見よ、あれこそが自由を勝ち取る我らの軍旗の色だ!」と歓喜の声をあげ、赤と白を解放のシンボルに定めたという。この有名な「フラミンゴ伝説」は、現在もペルーの教科書や絵本で語り継がれる国民的エピソードだ。
公式な色彩の定義において、赤は「祖国の独立のために流された先人たちの血と勇気・愛国心」を表し、白は「平和、正義、純潔、そして名誉」を象徴している。苛烈な闘争の末に勝ち取った自由への誓いが、このシンプルな縦縞に凝縮されているのだ。
さらに、政府旗の中央に配されるペルーの国章(エスクード・デ・ナシオナル)には、同国の豊かな自然と富が3つの区画に分けて描かれている。
- ビクーニャ(左上・水色地):アンデス高地に生息する野生のラクダ科動物で、「豊かな動物界」の象徴。
- キナの木(右上・白地):かつてマラリアの特効薬キニーネの原料となり無数の命を救った樹木で、「誇り高き植物界」の象徴。
- コルヌコピア(下部・赤地):金貨を次々と吐き出す豊穣の角で、インカ帝国以来の「無尽蔵の鉱物資源」の象徴。
標高1,200メートル以上の高地で咲き誇るペルーの国花「カントゥータ」や月桂樹のリースがこれらを優美に囲んでおり、一国の自然誌がそのまま凝縮された芸術的な構成となっている。