鵬雲斎大宗匠の生涯を語る上で避けて通れないのが、太平洋戦争末期の海軍予備学生(第14期飛行専修予備学生)としての過酷な従軍体験です。学徒出陣によって海軍に入隊した大宗匠は、特攻隊(神風特別攻撃隊)の基地に配属され、死を覚悟する極限状況に身を置きました。
出撃前夜、大宗匠は限られた茶道具を使い、明日命を散らす仲間たちへ自ら点てた一碗の茶を振る舞ったと述懐しています。戦友たちはその茶を口にし、「おいしい」「これで心置きなく行ける」と微笑んで飛び立っていきました。自身も出撃命令を待つ身でしたが、直前で終戦を迎え、奇跡的に生き残ることとなりました。
「なぜ自分だけが生き残ってしまったのか」——戦後、深い自責の念に苛まれた大宗匠が辿り着いた結論こそが、「戦友たちの分まで、茶の湯を通じて世界に平和を訴え続ける」という誓いでした。この誓いから生まれた言葉が、今や世界的なスローガンとなった「一碗からピースフルネスを(Peacefulness through a bowl of tea)」です。一杯の茶を挟んで向かい合えば、国境や宗教、人種の違いを超えて互いを尊重し合えるという確固たる信念が、大宗匠の活動の原点にあります。