花山薫の人物像には、明確な実在のモデルが存在します。昭和の混乱期に名を馳せた伝説のアウトロー、「安藤組」の大幹部・花形敬(はながた けい)です。「喧嘩の花形」「素手の花形」と恐れられ、刃物や拳銃を持つ相手にも一切武器を持たず、素手のみで立ち向かったとされる無頼派の伝説的人物です。
板垣恵介氏は花形敬の残した逸話から強いインスピレーションを受け、花山のキャラクター造形へと昇華させました。両者には以下のような際立った共通点が見出せます。
- 凶器を一切使わない素手喧嘩への執着:銃やドスが横行する裏社会において、己の拳一つで敵対勢力を制圧した実在の伝説を完全踏襲。
- 傷だらけの肉体と無表情の凄み:無数の刃物傷を刻まれながらも、相手を威圧する静かな佇まい。
- 弱者を虐げず、筋を通す任侠道:一般市民を巻き込まず、己の定めた義理のために命を張る姿勢。
また、花山の背中に彫られた巨大な刺青「侠客立ち(おとこだち)」の設定も、この美学を補強しています。初代花山組組長・花山弥吉を命がけで守り抜いた名もなき旅の博徒「釣鐘清五郎」の忠義を描いたこの刺青は、代々の組長が墨を入れる際、弥吉を背負う鐘馗様の傷口に墨を入れず、抗争で実際に傷を負って初めて「完成」するという掟を持ちます。花山が背負っているのは単なる皮膚の装飾ではなく、先祖の義理と男の生き様そのものです。