発酵温度やイーストの鮮度に問題がないにもかかわらず生地が膨らまない場合、次に疑うべきは生地の「捏ね」と「グルテン形成」の不足だ。日本の製パン業を牽引する名匠・志賀勝栄シェフの理論が示す通り、パン作りとは小麦粉中の二つのタンパク質(グリアジンとグルテニン)を水と物理的な力で結合させ、イーストが吐き出すガスを閉じ込める強固な網目構造を作り上げる作業である。
捏ね作業が甘くグルテン形成が不十分なままだと、イーストがどれほど懸命にガスを発生させても、気泡を保持できずに外へ漏れ出てしまう。結果として、いくら一次発酵の時間を長く引き延ばしたところで、穴の空いた風船のように生地は平たく潰れたまま膨らまないのだ。