仕事の拠点を東京に置きながらも、生活の根拠地を故郷・秋田県へと移した決断は、当時の芸能界では極めて異例だった。子育て環境を最優先に考え、雪かきをし、地域の行事に参加し、近隣の住民と酒を酌み交わす。華やかなスポットライトの裏側で、彼はずっと「生活者」としての自分を大切に守り抜いてきた。
土を踏みしめ、季節の移ろいを肌で感じる生活が、役者・柳葉敏郎にどれほど豊かな陰影をもたらしたかは計り知れない。都会の喧騒から距離を置くことで研ぎ澄まされた感性は、芝居の端々に宿る「嘘のなさ」へと直結している。地に足がついているからこそ、どんな誇張された世界観の中でも、一人の血の通った人間として立ち続けることができるのだ。