言葉の変容と社会心理に詳しい言語学者・金田一秀穂氏は、挨拶が持つ役割について興味深い指摘を続けている。「おはよう」の語源は「お早くからご苦労様です」という相手への労いであり、根底にあるのは敬意と共感だ。単に朝の時間を知らせる記号ではなく、人間関係の摩擦を減らす潤滑油としての機能を果たしている。
文化庁や国立国語研究所が実施してきた言語意識調査のデータを見ても、現代日本人の意識変化がはっきりと読み取れる。特に若年層を中心に、時間帯に関わらず「職場での最初の挨拶」として丁寧語をベースにした挨拶を交わすスタイルに違和感を持たない人が増えている。言語学的なアプローチから見ても、日本語の挨拶は決して固定化されたルールではなく、時代の要請に応じてしなやかに姿を変えているのだ。