SNSや獣医療相談窓口に寄せられる飼い主の声を取材すると、「愛猫の舌の動き」に関する疑問は特定のシチュエーションに集中していることがわかります。現場の臨床観察から見えてきたリアルな原因を紐解きます。
まず、猫が寝てる時に舌を出すシチュエーションについてです。多くの飼い主が「脳の病気ではないか」と心配しますが、大半はレム睡眠(浅い眠り)に伴う全身の筋肉弛緩が原因です。人間がいびきをかいたり半目になったりするのと同様、顎の脱力によって舌が自然とこぼれ落ちている状態であり、目覚めたときにすっと引っ込むのであれば病的な心配はありません。
一方、注意が必要なのが猫が舌をペロペロ出す理由です。何もない空中や自分の口周りを小刻みに舐め続ける行動は、心理的プレッシャーによる猫が舌を出すストレス反応(転位行動)であるケースが見られます。引っ越しや来客、同居動物との不和など環境変化による葛藤を紛らわせるために行われます。また、胃腸の不快感や吐き気(悪心)の前兆として舌を頻繁に出し入れすることもあるため、直後の嘔吐や食欲不振がないか注視しなければなりません。
さらに、老猫が舌を出す原因としては、加齢に伴う歯周病悪化による前歯の脱落が挙げられます。前歯が抜けて隙間ができると、舌を留めておく壁がなくなり、常に舌先が露出してしまいます。高齢猫では認知機能不全症候群(認知症)の初期症状として口元の動きに異常が現れる例も報告されています。