「仏教徒の比率が高い日本で、なぜお釈迦様の誕生日はカレンダーの赤い日(祝日)にならないのか」という疑問は、春を迎えるたびにインターネット上のフォーラムで白熱するテーマです。一方、12月25日のキリスト降誕祭(クリスマス)は世界中で公休日とされ、日本でも冬の一大イベントとして定着しています。
お釈迦様の誕生日が国民の祝日にならない背景には、法制度上の壁、歴史的経緯、そして社会構造の3つの決定的な理由が存在します。
最大の障壁は、日本国憲法第20条が定める「政教分離の原則」です。戦後の国民の祝日に関する法律(祝日法)では、特定の宗教儀礼に根ざした日を直接祝日に指定することを避ける方針が採られました。春分の日や秋分の日は、もともと皇室の宮中祭祀(春季皇霊祭・秋季皇霊祭)でしたが、名称を自然や先祖を敬う抽象的な言葉に変えて祝日法に組み込まれました。
さらに、クリスマスが戦後の高度経済成長期に製菓メーカーや百貨店主導の「世俗的な冬のギフトフェスティバル」として商業化に大成功したのに対し、花祭りは寺院境内で行われる伝統的作法の枠にとどまりました。消費経済と過度に結びつかなかったことは、商業的な大騒ぎを免れ、古来の厳粛な趣を現代に保ち続けた要因とも言えます。