近年、一部の寺社でQRコード決済(PayPayなど)や非接触型IC決済(交通系IC・クレジットカード)を導入する「スマート賽銭」が増加しています。導入の背景には、参拝者の利便性向上だけでなく、寺社が直面している切実な経済的理由が存在します。
金融機関による硬貨取扱手数料の有料化以降、大量の1円玉や5円玉をお賽銭として受け取ると、銀行への入金や両替の際に入金額以上の手数料が発生し、実質的な「赤字」に陥る寺社が相次ぎました。また、現金を置かないことによる賽銭泥棒などの防犯対策や、集計作業の省力化もキャッシュレス化を後押ししています。
一方で、伝統的な神職や僧侶の間では「現金を自らの手で手放すという身体的行為(喜捨・お供え)の感覚が薄れるのではないか」という懸念や、「データ上のやり取りは宗教的儀礼に馴染まない」とする慎重論も根強く残っています。
2026年現在の趨勢としては、本殿・本堂前のお賽銭箱には従来の現金を用い、授与所での御朱印・お守りの頒布や特別な寄付金窓口にキャッシュレス決済を限定導入するなど、伝統と利便性を両立させるハイブリッド運用が主流となっています。