お盆の法要を控えた門徒や檀家から寺院に寄せられる相談の中で、毎年群を抜いて多い誤解が「お布施を薄墨で書いてしまった」というトラブルです。結論から述べると、お布施に薄墨を使うことは明確なマナー違反とされています。
通夜や葬儀の香典で薄墨を用いるのは、「突然の訃報に接し、涙で墨が薄れてしまった」「急ぎ駆けつけたため、十分に墨を擦る時間がなかった」という深い哀悼の情を表現する伝統的作法です。しかし、お布施薄墨NGの理由は、その金銭が持つ宗教的意味合いの違いにあります。お布施は故人への香典(弔慰金)ではなく、読経を執り行う僧侶、ひいては本尊への感謝として捧げる「喜捨(きしゃ)」です。あらかじめ法要の日程を定めて準備する慶事・仏事の金銭であるため、敬意を込めて「濃く鮮やかな黒墨」で丁寧に書くのが正しい礼儀なのです。
寺院関係者への取材でも、「薄墨でお布施を持参されると、寺院の仏事に対して予期せぬ不幸があったかのような不自然な印象を与えてしまう」という声が聞かれます。筆ペンを用意する際は、パッケージに「弔事用・うす墨」と書かれたものではなく、必ず通常の「慶弔両用・濃墨」または毛筆を選択してください。