昭和30年代から40年代にかけて、黄金期を迎えていた日本映画産業。そのど真ん中で圧倒的な大衆的支持を集めたのが、東宝株式会社が世に送り出した映画『駅前シリーズ』だった。高度経済成長の槌音が響く日本列島で、地方や下町の駅前を舞台に繰り広げられる人間模様。名匠・久松静児監督らがメガホンを取り、庶民の逞しさと滑稽さを愛情たっぷりに描き出したこのシリーズは、映画館を満員札止めにする国民的娯楽となった。
スクリーンの向こう側に広がるのは、義理と人情、色恋沙汰、そして金銭の駆け引き。発展途上の日本人が抱えていたエネルギーと哀愁が、駅前という誰もが知る日常空間を通じて鮮やかに昇華されていた。映画館を出た観客がそのまま駅前の店に立ち寄り、ラーメンを啜りながら映画の感想を語り合う――そんな文化的な循環が、当時の街には確かに息づいていたのである。