競技の枠を越え、彼女の名が社会全体に轟いたのは、日本オリンピック委員会(JOC)理事時代に見せた果敢な言動だろう。数々の国際大会やメガイベントの誘致・運営を巡り、多くの関係者が沈黙を守る中、彼女は組織の「密室体質」と「説明責任の放棄」を公然と批判した。アスリートの尊厳が置き去りにされ、利権とメンツが優先される構造に対して、内部から異議を申し立てたのだ。
全日本柔道連盟における指導者の暴力問題や組織改革の局面でも、山口氏の立ち位置は一貫していた。内輪の論理で不祥事を覆い隠そうとする連盟幹部に対し、徹底した原因究明と被害者保護を要求。重鎮たちが顔をしかめる中、孤立を恐れずに正論を語り続けた。権力を持つ側に都合のいい「調和」を拒絶し、泥をかぶってでも透明性を勝ち取ろうとするその姿は、閉塞感に苦しむ現役選手たちにとって唯一の希望の光だった。