ネット上で「のぼりべつクマ牧場 怖い」と検索される最大の背景には、二つの要因が重なり合っています。一つは野生のヒグマが持つ凶暴なイメージ、そしてもう一つが名物展示施設「人の檻(ヒトのオリ)」が放つ強烈なスリルです。
北海道のニュースでは時折、野生ヒグマの出没や農作物被害がセンセーショナルに報じられます。そのため、初めて訪れる来園者の中には「フェンスを飛び越えて襲われないか」「飼育エリアの安全性は万全なのか」といった原初的な恐怖を抱く人が少なくありません。しかし、現場の飼育施設は頑丈なコンクリートと二重の高圧電流柵で厳格に隔離されており、半世紀以上の歴史において来園者エリアへヒグマが脱走した事故はゼロ件を維持しています。
そして、もう一つの「恐怖」の正体こそが、第二牧場内に設置された特殊観察施設「人の檻」です。人間が強化ガラスと格子で覆われた地下トンネル状の観察室に入り、外にいるヒグマをゼロ距離で見上げる構造になっています。
取材時、ガラスのすぐ向こう側には体重数百キログラムに達するオスの巨体が立ちふさがり、ガラス越しに「フシュー、フシュー」と荒い鼻息が直接伝わってきました。視界を覆い尽くす分厚い前足や鋭い爪、巨大な牙が数センチ先で動く瞬間、大人の来園者からも「思わず後ずさりした」「バイオハザードの世界に入り込んだようだ」と感嘆と悲鳴が入り混じった声が漏れます。つまり、この「怖い」という評判は危険性を意味するものではなく、野生の頂点捕食者を至近距離で目撃できる唯一無二のエンターテインメント体験への賛辞なのです。