「々」の最大の魅力であり、同時に難解さの元凶となっているのが、直前の文字の音をそのまま引き継ぐというカメレオンのような性質だ。
「人々」では「ひとびと」と濁音化し、「佐々木」では「ささき」と清音のまま繰り返される。「代々木」なら「よよぎ」、「種々」なら「しゅじゅ」あるいは「くさぐさ」だ。直前の漢字が何であれ、その音を自動的にコピーして反復する。これが反復符号(repetition mark)たる由縁である。
言語学的に見れば、日本語は同一の音を繰り返すことで意味を強調したり、複数形を表したりする文法構造を好む。「々」はその視覚的コストを削減するために編み出された、きわめて合理的でスピーディな記号なのだ。