乃が美の食パン価格を語る上で避けて通れないのが、その値上げの歴史と原材料コストの内訳である。創業当初(2013年)の価格は2斤で680円だった。そこから2026年現在の約1,000円前後まで、実に約1.5倍の価格上昇が起きている。
公式発表資料や報道各社の取材データを総合すると、値上げの主な要因は以下の4点に集約される。
① 国産小麦100%へのこだわりと調達コストの高騰
乃が美はカナダ産小麦を一部使用していた時期もあるが、現在は国産小麦(主に北海道産「ゆめちから」ブレンド)を中心に使用している。国産小麦は輸入小麦よりキロ単価で約1.5〜2倍の価格差があり、2026年以降の円安と国際穀物価格の変動がそのまま原価に跳ね返っている。
② 発酵バターとはちみつの配合量
乃が美の特徴である「芳醇な香り」の正体は、マーガリンではなく発酵バターを惜しみなく使用している点にある。通常の業務用マーガリンがキロ300円〜400円程度なのに対し、発酵バターはキロ1,500円〜2,500円。さらに副原料のはちみつも国産アカシア蜂蜜を使用しており、香りづけ程度の量ではなく「味を決定づける量」を投入している点がコストを押し上げる。
③ 乳化剤・保存料不使用によるロス率の高さ
市販の食パンには日持ちを良くするための乳化剤や保存料が添加されるが、乃が美はこれらを一切使用しない。そのため製造当日〜翌日が賞味期限となり、売れ残りは廃棄せざるを得ない。この廃棄ロス率が実は10〜15%程度あるとみられ、価格に織り込まれている。
④ 職人の手作業工程と店舗スタッフの人件費
乃が美のパンは工場のライン生産ではなく、各店舗のベーカリーで生地の分割・成形・焼成まで人の手による工程を重視している。大手パンメーカーの自動化ラインと比べると人件費比率が高く、これが「高級感」の正体であると同時に価格を下げられない構造的要因となっている。
2026年には一部商品で内容量を維持したままの価格改定(実質値上げ)が行われ、SNS上では「さすがに高くなりすぎ」「もう日常では買えない」という声が上がった。他方で「値段が上がっても品質が落ちていないなら仕方ない」という納得派も存在し、評価が二分しているのが2026年時点のリアルな状況だ。