「自然下で冬眠しているのだから、家でも寒くなれば放っておけばいい」——この思い込みこそが、最も多くの命を奪ってきた元凶だ。静岡県河津町の体感型動物園iZoo(イズー)園長であり、著名な爬虫類専門家の白輪剛史氏は、飼育下における安易な冬眠の危険性を繰り返し指摘している。十分な栄養蓄積と厳密な温湿度コントロールがないまま室温低下に任せた「疑似冬眠」は、冬眠ではなく単なる緩慢な衰弱死に他ならない。
飼育下では、通年でヒーターを用いた温度管理を行い、冬眠をさせずに冬を越させる「加温飼育」が現在の定説だ。日中はケージ内に28〜30℃前後の適温ゾーンを作り、最も熱いバスキングスポットは33〜35℃程度に設定する。夜間も20℃を下回らないよう保温器具を稼働させる。この緻密な温度勾配(サーマルグラディエント)が存在して初めて、トカゲは自らの体温を調整し、正常な消化・代謝活動を維持できるのだ。