鳥の足を観察すると、骨と皮ばかりで非常に細く、ふくらはぎのような膨らみが見当たりません。実は、鳥の足先(ウロコに覆われた部分)には筋肉が一切存在しません。足先を動かす筋肉はすべて羽毛に隠れた太ももや脛(すね)の上部に集中しており、そこから伸びる頑丈な「腱(けん)」がワイヤーのように足先の指骨まで繋がっています。
この仕組みは、操り人形(マリオネット)の糸と全く同じ原理です。鳥の足に筋肉と関節の肉付けがない理由は、主に2つの進化上の要請によるものです。
第一に「飛行のための徹底的な末端軽量化」です。翼を羽ばたかせて空を飛ぶ鳥類にとって、身体の中心から離れた末端(足先)が重いと、振り子のようにモーメント負荷がかかり、飛行効率が著しく低下します。筋肉を胴体近くに集約し、末端を腱と骨だけにすることで、極限の身軽さを実現しました。
第二に「凍傷の回避」です。筋肉細胞は多量の血液と酸素、そして熱エネルギーを常に消費します。もし足先に筋肉があれば、氷上で筋肉組織が凍結壊死してしまいます。代謝活性の低い腱・骨・角質層(ウロコ)だけで構成されているからこそ、冷え切っても組織障害が起きません。
さらに、鳥類の足には「自動把握機構(デジタル・テンドン・ロッキング)」が備わっています。木に止まって体重がかかると、膝や足首が曲がる張力によって自動的に腱が引っ張られ、指が枝をガッチリと掴む方向にロックされます。このため、鳥は筋肉の力を使わずに、熟睡していても電線や枝から落下することはありません。