ワタナベマホトが築き上げた帝国は、視聴者との「疑似的な近さ」によって支えられていた。画面の向こうのスターが、自分だけに語りかけてくる。その甘美な錯覚は、特に判断力の未熟な未成年者にとって、抗いがたい魔力を持つ。ファンコミュニティ内での彼の言葉は絶対であり、逆らうことはコミュニティからの追放、ひいては自己の存在否定を意味していた。
この非対称な関係性こそが、事件の温床となった。憧れの存在から求められれば、たとえそれが倫理的に誤っていると分かっていても、拒絶することは極めて難しい。心理的な支配は、物理的な拘束よりも見えにくく、それゆえに悪質である。